仕訳プリント⑥ 過不足と小口現金 

次の取引を仕訳しなさい。

1. 現金の帳簿残高は¥34,000だったが、実際の現金の残高は¥30,000であった。

借 方 科 目 金  額 貸 方 科 目 金  額
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【解答】

現金過不足4,000現 金4,000

【解説

現金について、帳簿上での金額(帳簿残高)と、実際に手元にある金額(実際有高)に差異が生じた場合、この差額を勘定科目「現金過不足」を使って一時的に記録する処理をします
仕訳は現実に即したものを記録しなければならないので、実際有高を基準とする、つまり、帳簿上の金額を実際の有高に合わせるように会計処理を行います。

本問では、現金の実際有高30,000円、帳簿残高34,000円なので、帳簿残高を30,000円にするように、帳簿残高を4,000円減らします。
現金(資産)を減らす場合は、貸方(右)に記入します。

現 金4,000

同時に、その相手科目として、借方(左)に現金過不足を記入します。

現金過不足4,000現 金4,000

本来、この借方(左)には現金減少の原因を記入するのですが、それが不明であるため、一時的に「現金過不足」勘定で埋めておくのです。
また、この仕訳からわかるように、借方(左)に現金過不足の残高があるということは、「実際の現金が帳簿よりも不足している」ことを意味します。

なお、「現金過不足」は、プラスマイナスにかかわらず、現金の実際有高から帳簿金額にどれだけ差があるのかを示したものであるので、資産・負債・資本(純資産)・収益・費用の基本的な分類のどれにも当てはまりません。

帳簿残高を減らすため、現金(資産)を減少させるので貸方(右)に現金4,000、その相手勘定を現金過不足で処理するので借方(左)に現金過不足4,000を示します。

現金過不足が生じている場合、帳簿金額を実際有高に合わせる仕訳を行う
現金の帳簿上の金額が実際有高よりも多いのなら、帳簿金額を減らすように仕訳を行う
現金を減らす場合は「現金」を貸方に記入するので、空いている借方に「現金過不足」を記入する

2. 上記1の差額の原因を調査したところ、手数料の支払い¥4,000が未記帳であることが判明した。

借 方 科 目 金  額 貸 方 科 目 金  額
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【解答】

支払手数料4,000現金過不足4,000

【解説

問1で計上した現金過不足の原因が判明したときの仕訳を行います。
「現金過不足」勘定は、あくまで現金の過不足の原因を見つけるまでの一時的なつなぎの勘定科目です。つまり、その原因が判明した際には、「現金過不足」から実際の原因となる勘定科目に振り替えて、現金過不足残高を消す(減らす)会計処理を行います。

一連の流れを仕訳で表すと、次のようになります。
まず、この4,000円について、支払手数料として現金を払ったとして、初めから正しい記帳をしていれば次の仕訳➀をしていたはずです。

支払手数料4,000現 金4,000…①

しかし、現金4,000円が不足していることが分かった段階では支払手数料として支払ったことが不明であったため、実際にはまず現金4,000円の減少だけを仕訳しました。

現 金4,000

その際に、現金の相手勘定が空っぽであってはいけないので、借方(左)を現金過不足勘定を使って一時的に埋めておくことにしました。

現金過不足4,000現 金4,000…➁

問1の仕訳です。こうすることで、帳簿を見れば原因不明な現金過不足が発生していることが一目瞭然になります。
その後、支払手数料がその原因だと判明しました。ということは、現金過不足で一時的に埋めていた借方(左)の部分に支払手数料を記入し、仕訳➀に直さなくてはいけません。
しかし、すでに仕訳➁を行っています。したがって、原因が判明してお役御免となった現金過不足を、貸方(右)に計上して相殺させて取り消します。

現金過不足4,000

こうすることで、仕訳➁で借方(左)に計上していた現金過不足が打ち消されます。
また同時に、現金減少の実際の原因である支払手数料を借方(左)に計上します。
支払手数料は費用なので、増やすためには借方(左)に記入します。

支払手数料4,000現金過不足4,000…➂

この仕訳➂が、本問の解答の仕訳となります。
元々してあった仕訳➁に本問の解答仕訳➂を合算させると、次のようになります。

現金過不足4,000現 金4,000
支払手数料4,000現金過不足4,000

現金過不足が貸借で相殺されて、本来あるべき仕訳➀のかたちに落ち着きます。

支払手数料(費用)が増加したので借方(左)に支払手数料4,000、現金過不足の借方残高を消すために貸方(右)に現金過不足4,000を示します。

現金過不足の本当の原因が判明した際には、原因となる勘定科目を計上し、同時にその分の現金過不足残高を打ち消す仕訳を行う

3. 現金の実際有高が帳簿残高より¥2,000不足していた。

借 方 科 目 金  額 貸 方 科 目 金  額
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【解答】

現金過不足2,000現 金2,000

【解説

現金過不足の問題文はなかなかややこしいものです。
問1は実際有高と帳簿残高の実際の金額が提示されましたが、本問ではその差額のみが提示されています。また、実際有高と帳簿残高のどちらがどちらに対して多い・少ないなど、様々な表現で出題されます。

しかし、どのような問題文であったとしても、「帳簿残高を実際有高に合わせる仕訳をする」ことには変わりありません。
実際有高は現実として存在する現金の金額ですから、仕訳で変えようがありません。もしも仕訳で実際有高を操作できるのならば、無から現金を生み出せてしまいます。
仕訳で金額を変えられるのは、あくまで記録上の金額である「帳簿残高」です。帳簿や会計ソフト上のデータだから変更できるのです。
「仕訳で変えられる帳簿残高変えられない実際有高に合わせる」ということを意識してください。
そのことを常に意識し、わかりやすいように問題文を言い換えるなどの対策をしましょう。

本問では、問題文を言い換えると「帳簿残高は実際有高よりも2,000円分多い」ということです。
ということは、帳簿残高を実際有高に合わせるために、帳簿残高を2,000円減らします。

帳簿残高を減らすため、現金(資産)を減少させるので貸方(右)に現金2,000、その相手勘定を現金過不足で処理するので借方(左)に現金過不足2,000を示します。

現金過不足を計上する問題は、つねに「帳簿残高を実際有高に合わせる」ことを意識する

4. 上記3の差額の原因を調査したが、決算までに判明しなかった。決算において適切に処理する。

借 方 科 目 金  額 貸 方 科 目 金  額
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【解答】

雑 損2,000現金過不足2,000

【解説

問2のように、現金過不足の原因が判明した際にはそれに当てはまる勘定科目に振り替えればいいのですが、結局決算までに原因がわからないこともありえます。
その場合、一時的なつなぎである「現金過不足」が財務諸表に残るのは望ましいことではないので、決算において、新たな勘定科目「雑益(収益)」または「雑損(費用)」へと振り替えます。
現金過不足の原因は不明のままですが、決算という切りのいいタイミングでとりあえずの決着をつけてしまうのです。
雑益とは、「原因はわからないが現金を得た」ということを収益としてみなすことです。
雑損とは、「原因はわからないが現金を失った」ということを費用としてみなすことです。
一時的なつなぎの現金過不足を取り消す処理を行い、その相手勘定を埋めるように「雑益」「雑損」を記入します。
費用を増加するときは借方(左)に、収益を増加するときは貸方(右)に記入するはずです。
ゆえに、現金過不足を打ち消す際に貸方記入になったのならば空いている借方に雑損(費用)を、借方記入になったのならば空いている貸方に雑益(収益)を記入します。
本問を使って、雑益・雑損の処理の具体的な方法を見ていきましょう。

本問においては、問3の仕訳で現金過不足が借方に計上されていました。

現金過不足2,000現 金2,000

この現金過不足を取り消すために、貸方(右)に現金過不足2,000を記入します。

現金過不足2,000

このとき、現金過不足の相手勘定が空欄になっています。この空欄を埋めるように、「雑益(収益)」または「雑損(費用)」を記入します。
本問では、空欄になっているのは借方(左)です。ここで、収益/費用が増えたらどちらに記入するのかを考えます。
収益が増えたら貸方(右)に記入します(売上など)。費用が増えたら借方(左)に記入します(仕入など)。
借方(左)の空欄を埋めるには、借方(左)に記入して増える方を使います。つまり、本問では費用である「雑損」で埋めます。

雑 損2,000現金過不足2,000

そもそも、この現金過不足は問3で現金の不足を表していたので、これを費用(損失)として処理するのは理解できるかと思います。

現金過不足の借方残高を打ち消すために、貸方(右)に現金過不足2,000を示します。そして空いている借方(左)を埋めるように、借方に記入すれば増加となる費用の雑損2,000を示します。

決算まで現金過不足が残ってしまった場合は、雑益または雑損に振り替える
仕訳では、現金過不足残高を打ち消すとともに、借方が空いているなら雑損を、貸方が空いているなら雑益を記入する

5. 現金の帳簿残高は¥34,000だったが、実際の現金の残高は¥39,000であった。

借 方 科 目 金  額 貸 方 科 目 金  額
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【解答】

現 金5,000現金過不足5,000

【解説

本問では、現金の実際有高39,000円、帳簿残高34,000円なので、帳簿残高を39,000円にするように、帳簿残高を5,000円増やします。
現金(資産)を増やす場合は、借方(左)に記入します。

現 金5,000

同時に、その相手科目として、貸方(右)に現金過不足を記入します。

現 金5,000現金過不足5,000

本来、この貸方(右)には現金増加の原因を記入するのですが、それが不明であるため、一時的に「現金過不足」勘定で埋めておくのです。
また、この仕訳からわかるように、貸方(右)に現金過不足の残高があるということは、「実際の現金が帳簿よりも過多になっている」ことを意味します。

帳簿残高を増やすため、現金(資産)を増加させるので借方(左)に現金5,000、その相手勘定を現金過不足で処理するので貸方(右)に現金過不足5,000を示します。

現金の帳簿上の金額が実際有高よりも少ないのなら、帳簿金額を増やすように仕訳を行う
現金を増やす場合は「現金」を借方に記入するので、空いている貸方に「現金過不足」を記入する

6. 上記5の差額の原因を調査したところ、手数料の受け取り¥4,500が未記帳であることが判明した。残額は引き続き調査する。

借 方 科 目 金  額 貸 方 科 目 金  額
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【解答】

現金過不足4,500受取手数料4,500

【解説

問5で計上した現金過不足の一部の原因が判明したときの仕訳を行います。
一時的なつなぎの勘定科目である「現金過不足」から、実際の原因である「受取手数料」に振り替えて、現金過不足残高を消す(減らす)会計処理を行います。

流れとしては、問2と同じように行います。ただし、問2は現金の不足、本問は現金の過多という違いがあることに注意してください。
一連の流れを仕訳で表すと、次のようになります。

受取手数料について本来すべきはずの仕訳
現 金4,500受取手数料4,500…①

これ以降が、原因不明の現金増加について実際に行う仕訳の処理です。

原因不明の現金5,000円を増やす
現 金5,000
貸方(右)を現金過不足で一時的に埋める(問5解答)
現 金5,000現金過不足5,000…➁

4,500円分は受取手数料が原因だと判明します。

4,500円分の現金過不足を取り消す
現金過不足4,500
4,500円分の現金増加原因である受取手数料の計上
現金過不足4,500受取手数料4,500…➂

この仕訳➂が、本問の解答の仕訳となります。

仕訳➁と仕訳➂を合算
現 金5,000現金過不足5,000→500
現金過不足4,500受取手数料4,500

現金過不足5,000円のうち原因が判明したのは4,500円分なので、残りの500円分はまだ現金過不足の貸方残高として残っています。
上記の仕訳をわかりやすいように分解すると、次のように仕訳➀と現金過不足残額500円の仕訳④に分けられます。

現 金4,500受取手数料4,500…①
現 金500現金過不足500…④

④の現金過不足は、まだ解消されないまま残ることになります。

受取手数料(収益)が増加したので貸方(右)に受取手数料4,500、現金過不足の貸方残高を消すために借方(左)に現金過不足4,500を示します。

7. 上記6処理後の残額の原因を調査したが、決算までに判明しなかった。決算において適切に処理する。

借 方 科 目 金  額 貸 方 科 目 金  額
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【解答】

現金過不足500雑 益500

【解説

問5から問6を経た上で、残っている現金過不足を決算において処理する仕訳をします。
処理の方法は問4と同じですが、元の現金過不足の残高が貸方にあることに注意してください。

問6解説の仕訳④からわかるように、現金過不足は貸方(右)に500円残っています。

仕訳④
現 金500現金過不足500
現金過不足の貸方残高500円を取り消すために借方(左)に記入
現金過不足500

貸方(右)が空欄なので、これを埋めるには、貸方(右)に記入して増える方を使います。つまり、本問では収益である「雑益」で埋めます。

現金過不足500雑 益500

そもそも、この現金過不足は問5で現金の過多を表していたので、これを収益(利益)として処理するのは理解できるかと思います。

現金過不足の貸方残高を打ち消すために、借方(左)に現金過不足500を示します。そして空いている貸方(右)を埋めるように、貸方に記入すれば増加となる収益の雑益500を示します。

8. 小口現金として¥30,000を小切手を振り出して渡した。

借 方 科 目 金  額 貸 方 科 目 金  額
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【解答】

小口現金30,000当座預金30,000

【解説

日常的に発生する少額の経費の支払いのために、支払い担当者に現金などを前渡ししておく制度があります(インプレスト・システム)。
大きな会社だと、現金の支払いについて全てを会社の金庫係が行うのは難しいので、現金を小分けにして各部署の支払い担当者に前渡ししておくのです。
この支払い担当者へ前渡しした際に、勘定科目「小口現金(資産)」を使って処理します。
なお、小口現金から支払った諸々の経費についての仕訳は、小口現金の支払い担当者が行うのではなく、支払い担当者から報告を受けた会計担当者が行うことになります。

小口現金(資産)が増加したので借方(左)に小口現金30,000、当座預金(資産)が減少したので貸方(右)に当座預金30,000を示します。

※インプレスト(imprest)は、前払金や支度金などのことを意味します。

9. 上記8の小口現金について、通信費¥1,500、消耗品費¥11,000、旅費交通費¥7,000を支出したとの報告を受けた。

借 方 科 目 金  額 貸 方 科 目 金  額
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【解答】

通信費1,500小口現金19,500
消耗品費11,000
旅費交通費7,000

【解説

問8で小口現金として前渡ししていた金額から、実際に支払ったことを報告された際の処理を行います。
諸々の費用を計上し、それらが小口現金から支払われたという仕訳をします。

通信費(費用)が増加したので借方(左)に通信費1,500、消耗品費(費用)が増加したので借方(左)に消耗品費11,000、旅費交通費(費用)が増加したので借方(左)に旅費交通費7,000を、小口現金(資産)が減少したので貸方(右)に小口現金19,500を示します。

10.上記9の報告にもとづき、支出した金額を小切手を振り出して補給した。

借 方 科 目 金  額 貸 方 科 目 金  額
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【解答】

小口現金19,500当座預金19,500

【解説

問9で支払いを報告された19,500円分を、当座預金から小口現金に補給した際の仕訳を行います。
小口現金から支払った金額と同額分だけ補給します。

小口現金(資産)が増加したので借方(左)に小口現金19,500、当座預金(資産)が減少したので貸方(右)に当座預金19,500を示します。

11.小口現金について、切手代¥800、コピー用紙¥1,400、バス代¥2,000を支出したとの報告を受け、ただちに小切手を振り出して補給した。(小口現金勘定を使わない仕訳)

借 方 科 目 金  額 貸 方 科 目 金  額
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【解答】

通信費800当座預金4,200
消耗品費1,400
旅費交通費2,000

【解説

本来、実際には諸費用を小口現金から支払っているため、問9と問10のように小口現金の減少と増加それぞれの仕訳をするものです。
しかし、本問のように、報告を受けた後「ただちに」補給したとある場合は、小口現金の減少と増加が間を置かずになされているということから、小口現金を省略して、問9と問10のかたちの仕訳をまとめた仕訳を行うことが可能です。

通信費(費用)が増加したので借方(左)に通信費800、消耗品費(費用)が増加したので借方(左)に消耗品費1,400、旅費交通費(費用)が増加したので借方(左)に旅費交通費2,000を、当座預金(資産)が減少したので貸方(右)に当座預金4,200を示します。