仕訳プリント⑩ 貸倒れ 

次の取引を仕訳しなさい。

1. A商店が倒産し、同店に対する売掛金¥60,000を貸倒れとして処理した。なお、貸倒引当金の設定はない。

借 方 科 目 金  額 貸 方 科 目 金  額
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【解答】

貸倒損失60,000売掛金60,000

【解説

売掛金や受取手形など、売上代金の未回収分のことを総じて売上債権といいます。
未回収状態ですから、取引相手に何かがあった場合、売上債権の回収ができなくなってしまう可能性があります。このことを、貸倒れといいます。
本問では、相手が倒産してしまい、実際に売掛金の回収が不可能になり、貸倒れてしまった際の仕訳をします。

売掛金とは「あとで売り上げの代金を受け取ることができる権利」ですが、その権利が行使されることなく消失してしまったので、その分の売掛金を減らします。
またこれは、60,000円分の資産が消失して損失を被ってしまったことを意味するので、これを示すために勘定科目「貸倒損失(費用)」で処理します。

売掛金(資産)が減少したので貸方(右)に売掛金60,000、その分貸倒損失(費用)を増加させるので借方(左)に貸倒損失60,000を示します。

売掛債権が回収不能になってしまったときには、その売上債権を減らし、費用の「貸倒損失」で処理する

2. B商店に対する売掛金(当期発生)¥50,000が貸倒れとなった。貸倒引当金の残高は¥20,000である。

借 方 科 目 金  額 貸 方 科 目 金  額
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【解答】

貸倒損失50,000売掛金50,000

【解説

問1と異なり、本問では貸倒引当金の残高があります。
貸倒引当金とは、将来発生するかもしれない貸倒れに備えて、事前にいくらかを使わないように取っておいた引当金のことを指します。
実際に貸倒れが発生してしまったときには、貸倒引当金を取り崩して、貸倒れでの損失の補てんとします。
しかし、ここで注意が必要です。
貸倒引当金は、決算にあたり、その時点において計上されていた売上債権に対して設定をします。
つまり、現在帳簿に記載されている貸倒引当金の残高は、前期末までの売上債権を対象としているということです。
逆に言えば、貸倒引当金を設定した前期決算以降に発生した売上債権、つまり当期に発生した売上債権は、貸倒引当金の対象になっていないということです。
したがって、前期末以前に発生していた売上債権が貸倒れたときには貸倒引当金を利用できますが、当期に発生した売上債権の貸倒れには貸倒引当金を利用することができません
本問においては、貸倒れになった売掛金は当期に発生したものであると示されているため、貸倒引当金の残高があったとしても、補てんのために貸倒引当金を利用することができません。
その結果、貸倒れた売掛金の全額を貸倒損失として処理することになります。

売掛金(資産)が減少したので貸方(右)に売掛金50,000、その分貸倒損失(費用)を増加させるので借方(左)に貸倒損失50,000を示します。

貸倒れが発生した際、それが前期末以前に発生した売上債権ならば貸倒引当金を補てんに使えるが、当期に発生したものならば貸倒引当金を使えない

3. 決算において、売掛金の残高¥100,000に対して2%の貸倒れを見積もった。貸倒引当金の残高はない。

借 方 科 目 金  額 貸 方 科 目 金  額
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【解答】

貸倒引当金繰入2,000貸倒引当金2,000

【解説

問2で出てきた貸倒引当金を設定する仕訳をします。
貸倒引当金は、決算において、その時点での売上債権に対してパーセントを掛けて設定します。
貸倒引当金として設定した金額は使わないように取っておくのですから、勘定科目「貸倒引当金(評価勘定)」を貸方に計上し、次期に繰り越せるようにします。
なお、貸倒引当金は売上債権の評価勘定であるため、区分としては資産のマイナス、もしくは負債の仲間とみなします。
また同時に、貸倒引当金の残高を増やすために投入した金額を、将来掛かるかもしれない費用とみなして、勘定科目「貸倒引当金繰入(費用)」で計上します。
本問では、売掛金100,000円に対して2%を掛けて算出します。

  貸倒引当金設定:売掛金100,000円×2%=2,000円

したがって、貸倒引当金の金額を2,000円と設定します。
貸倒引当金の残高はそもそも0であったため、この貸倒引当金の設定を成立させるためには新たに貸倒引当金2,000円を増加させる必要があります。

繰入額:設定金額2,000円-残高0円=2,000円

ゆえに、貸倒引当金繰入として2,000円を計上します。

貸倒引当金(資産のマイナス)を0から2,000まで増加させるので貸方(右)に貸倒引当金2,000、その分貸倒引当金繰入(費用)を増加させるので借方(左)に貸倒引当金繰入2,000を示します。

貸倒引当金を設定するために、新たにどれだけ追加さなければならないかを計算し、その分を貸倒引当金繰入で処理する

4. 決算において、売掛金の残高¥100,000に対して2%の貸倒れを見積もった。貸倒引当金の残高は¥800ある。

借 方 科 目 金  額 貸 方 科 目 金  額
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【解答】

貸倒引当金繰入1,200貸倒引当金1,200

【解説

貸倒引当金の設定について、問3と異なり、本問では貸倒引当金の残高がもとからある場合の仕訳を行います。
まず、貸倒引当金の設定金額を算出します。

貸倒引当金設定:売掛金100,000円×2%=2,000円

したがって、貸倒引当金の金額を2,000円と設定します。
もともと貸倒引当金の残高として800円あったため、この貸倒引当金2,000円の設定を成立させるためには、新たに貸倒引当金を1,200円増加させる必要があります。

繰入額:設定金額2,000円-残高800円=1,200円

ゆえに、貸倒引当金繰入として1,200円を計上します。

貸倒引当金(資産のマイナス)を800から2,000まで増加させるので貸方(右)に貸倒引当金1,200を、その分貸倒引当金繰入(費用)を増加させるので借方(左)に貸倒引当金繰入1,200を示します。

<注意>
本問のような問題において、貸倒引当金の設定金額2,000円をそのまま繰り入れてしまい、次のように仕訳をしてしまうミスがみられます。

誤りの仕訳
貸倒引当金繰入2,000貸倒引当金2,000

そもそも貸倒引当金の残高として800円あったのです。そこからさらに2,000円増加させてしまうと、貸倒引当金が合わせて2,800円となってしまい、設定金額の2,000円から800円オーバーしてしまいます。
貸倒引当金の残高が0円ならば「貸倒引当金の設定金額=貸倒引当金繰入額」となりますが、残高があるのならば「貸倒引当金の設定金額-残高=貸倒引当金繰入額」となります。注意しましょう。

5. 決算において、売掛金の残高¥100,000と受取手形の残高¥40,000の合計に対して2%の貸倒れを見積もった。貸倒引当金の残高は¥1,000ある。

借 方 科 目 金  額 貸 方 科 目 金  額
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【解答】

貸倒引当金繰入1,800貸倒引当金1,800

【解説

本問では、売掛金だけでなく受取手形も含めた売上債権に対して貸倒引当金の設定を行います。

貸倒引当金設定:(売掛金100,000円+受取手形40,000円)×2%=2,800円

したがって、貸倒引当金の金額を2,800円と設定します。
もともと貸倒引当金の残高として1,000円あったため、この貸倒引当金の設定を成立させるためには、新たに貸倒引当金を1,800円増加させる必要があります。

繰入額:設定金額2,800円-残高1,000円=1,800円

ゆえに、貸倒引当金繰入として1,800円を計上します。

貸倒引当金(資産のマイナス)を1,000から2,800まで増加させるので貸方(右)に貸倒引当金1,800を、その分貸倒引当金繰入(費用)を増加させるので借方(左)に貸倒引当金繰入1,800を示します。

6. C商店が倒産し、同店に対する売掛金(前期発生)¥40,000を貸倒れとして処理した。なお、貸倒引当金の残高が¥50,000ある。

借 方 科 目 金  額 貸 方 科 目 金  額
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【解答】

貸倒引当金40,000売掛金40,000

【解説

前期に発生した売掛金の貸倒れの際の仕訳をします。
この売掛金は前期に発生しているので、現在設定されている貸倒引当金の対象となります。
したがって、貸倒引当金を取り崩して補てんとして利用します。
なお、売掛金の全額をまかないきれるだけの貸倒引当金残高があるので、貸倒損失は計上されません。

売掛金(資産)が減少したので貸方(右)に売掛金40,000、その分貸倒引当金(資産のマイナス)を減少させるので借方(左)に貸倒引当金40,000を示します。

7. D商店が倒産し、同店に対する売掛金(前期発生)¥40,000を貸倒れとして処理した。なお、貸倒引当金の残高が¥30,000ある。

借 方 科 目 金  額 貸 方 科 目 金  額
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【解答】

貸倒引当金30,000売掛金40,000
貸倒損失10,000

【解説

問6と同じように、前期に発生した売掛金の貸倒れの際の仕訳をします。
この売掛金は前期に発生しているので、現在ある貸倒引当金の対象となります。
したがって、貸倒引当金を取り崩して補てんとして利用します。
なお、売掛金の全額をまかないきれるだけの貸倒引当金残高がありません。ゆえに、貸倒引当金で補てんしてなお足が出てしまった分は、貸倒損失として計上します。

売掛金(資産)が減少したので貸方(右)に売掛金40,000を、その分貸倒引当金(資産のマイナス)を減少させるので借方(左)に貸倒引当金30,000、なお足が出ている分を貸倒損失(費用)として計上するので借方(左)に貸倒損失10,000を示します。

貸倒れを貸倒引当金で補てんした際、足が出てしまった場合は、その分は貸倒損失で処理する

8.【難】決算において、売掛金の残高¥100,000に対して2%の貸倒れを見積もった。貸倒引当金の残高は¥2,500ある。

借 方 科 目 金  額 貸 方 科 目 金  額
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【解答】

貸倒引当金500貸倒引当金戻入500

【解説

貸倒引当金の設定をする仕訳ですが、これまでの問題とは少し異なります。
まず、貸倒引当金の設定金額を算出します。

貸倒引当金設定:売掛金100,000円×2%=2,000円

したがって、貸倒引当金の金額を2,000円と設定します。
ここで注意が必要です。
もともと貸倒引当金の残高として2,500円あったため、この貸倒引当金の設定を成立させるためには、貸倒引当金から500円減少させる必要があります。

戻入額:設定金額2,000円-残高2,500円=△500円

このように、貸倒引当金の設定金額がもとからあった残高よりも小さいときは、貸倒引当金をその分だけ減少させます。
それは、備えとして使わずに取っておいた金額の一部を取り崩して、自由に使える金額に戻し入れたということなので、勘定科目「貸倒引当金戻入(収益)」を使って表します。
したがって、本問では貸倒引当金戻入として500円を計上します。

貸倒引当金(資産のマイナス)を2,500から2,000まで減少させるので借方(左)に貸倒引当金500を、その分貸倒引当金戻入(収益)を増加させるので貸方(右)に貸倒引当金戻入500を示します。

貸倒引当金を設定する際に、貸倒引当金を差し引かなければならない場合は、その分を貸倒引当金戻入で処理する

9.【難】E商店が倒産し、同店に対する売掛金(前期発生¥20,000及び当期発生¥10,000)を貸倒れとして処理した。なお、貸倒引当金の残高が¥25,000ある。

借 方 科 目 金  額 貸 方 科 目 金  額
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【解答】

貸倒引当金20,000売掛金30,000
貸倒損失10,000

【解説

発生時期が異なる売掛金が同時に貸倒れてしまったときの仕訳をします。
この場合も、貸倒引当金のルールは変わりません。
貸倒引当金残高について、前期末以前に発生した売上債権には利用できますが、当期発生のものには利用できません。
したがって、前期発生の売掛金20,000円については全額を貸倒引当金からの補てんを行い、当期発生の売掛金10,000円については全額を貸倒損失で処理します。
貸倒引当金残高として5,000円残りますが、だからといって当期発生分に充てることはしません。

売掛金(資産)が減少したので貸方(右)に売掛金30,000、20,000円分について貸倒引当金(資産のマイナス)を減少させるので借方(左)に貸倒引当金20,000、10,000円分については貸倒損失(費用)が増加するので借方(左)に貸倒損失10,000を示します。

10. 【難】F商店が倒産し、同店に対する売掛金(前期発生)¥80,000のうち¥20,000は現金で回収したが、残額は貸倒れとして処理することとした。なお、貸倒引当金の残高が¥10,000ある。

借 方 科 目 金  額 貸 方 科 目 金  額
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【解答】

現 金20,000売掛金80,000
貸倒引当金10,000
貸倒損失50,000

【解説

本問では、貸倒れが発生しましたが、売掛金の一部分が回収できた際の仕訳をします。
まず、現金で20,000円回収できているので、それについては現金の増加を計上します。
残りの60,000円については、この売掛金が前期発生のものであるため、貸倒引当金から補てんできます。貸倒引当金残高は10,000円なので、その分は貸倒引当金から充てます。
それでも足が出てしまった50,000円については、貸倒損失の処理を行います。

売掛金(資産)が減少したので貸方(右)に80,000を、そのうち20,000円分は現金(資産)で回収したので借方(左)に現金20,000、10,000円分は貸倒引当金を減少させて補てんするので借方(左)に貸倒引当金10,000、なお足が出ている分を貸倒損失(費用)として計上するので借方(左)に貸倒損失50,000を示します。

11. 前期に貸倒れとして処理していた売掛金のうち、¥15,000を現金で回収した。

借 方 科 目 金  額 貸 方 科 目 金  額
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【解答】

現 金15,000償却債権取立益15,000

【解説

貸倒れとして処理した売上債権が、その期以降に回収できた場合の仕訳をします。

売掛債権が貸倒れて回収できなかったとき、それを貸倒引当金の取り崩しか、貸倒損失として処理します。貸倒損失は費用なので、新年度になったらリセットされてゼロから計上されることになります。つまり、貸倒れで回収不能になってしまった分については、決算において当期の仕訳として帳簿の上では決着をつけるのです。
仮に、当期に貸倒れ処理した債権が当期中に回収できた場合については、帳簿での決着をつける前の話なので、貸倒損失の計上や貸倒引当金の取り崩しを取り消す処理をすれば事足りるため、会計上の問題は発生しません。

しかし、本問のように、決算で決着をつけたあとにその売上債権を回収できる場合があります
このとき、貸倒れてしまった売掛金などの売上債権や、その補てんの貸倒引当金はすでに帳簿上で減らしていますし(問1、6などの仕訳)、発生した分の貸倒損失や、取り崩した分を補充した貸倒引当金繰入などは前期決算で確定して取り消すことができません。
つまり、決着をつけたあとで回収できた分について、帳簿上での残高が残っていないため、資産の振り替え(売掛金→現金など)や損失計上の取り消しといった会計処理ができません。
したがって、決着がついたあとで回収できた分については、何かを取り消すのではなく、当期の新たな収益として会計処理を行う必要があります。このときに使うのが、勘定科目「償却債権取立益(収益)」です。
これは、「償却(費用化)し決着をつけた売上債権を取り立てることによって出た収益」という意味です。

現金(資産)が増加したので借方(左)に現金15,000、償却債権取立益(収益)が増加したので貸方(右)に償却債権取立益15,000を示します。

前期に貸倒れとして処理していた売上債権を回収できたときは、「償却債権取立益」を使って処理する

12. 前期に貸倒れとして処理していた売掛金¥50,000について、そのうちの¥10,000を現金で受け取った。

借 方 科 目 金  額 貸 方 科 目 金  額
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【解答】

現 金10,000償却債権取立益10,000

【解説

本問も問11と同様に、前期に貸倒処理した債権が期を跨いで回収できたときの仕訳をします。
なお、問題文では前期に売掛金50,000円を貸倒処理していたとありますが、実際に回収できたのは10,000円だけなので、この10,000円についてのみ仕訳を行います。

現金(資産)が増加したので借方(左)に現金10,000、償却債権取立益(収益)が増加したので貸方(右)に償却債権取立益10,000を示します。

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