仕訳プリント⑫-1 損益
次の取引を仕訳しなさい。
1. 売上勘定の貸方残高¥800,000を損益勘定へ振り替える。
借 方 科 目 | 金 額 | 貸 方 科 目 | 金 額 |
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【解答】
売 上 | 800,000 | 損 益 | 800,000 |
【解説】
決算を迎えて次期に移行する会計処理において、各勘定について当期と次期とを明確に区切るために、それぞれの勘定科目に適した締め切りの処理を行います。
資産・負債・資本(純資産)は、次期に繰り越すことができるので、次期に繰り越す処理を行います。
収益・費用は、「当期においてどれだけお金が入ってきたか、出ていったか」をはかる項目なので、次期に繰り越しません。もし、収益や費用を次期に繰り越してしまったら、次期のお金の出入りに当期のお金の流れが混在してしまい、次期だけの金額を正確に把握できなくなってしまいます。ゆえに、収益・費用の勘定は決算での締め切りでリセットして、翌期首になったらゼロから始めるのです。
したがって、決算においてそれぞれの収益・費用勘定の残高をゼロにするための処理を行う必要があります。それが、勘定科目「損益」への振り替えです。
全ての収益・費用勘定は、損益勘定へ振り替えることで、その残高をゼロにします。逆に言えば、損益勘定には、全ての収益・費用勘定の残高が集まってくるということです。
収益を全て集めれば、「(a)当期においてどれだけお金が入ってきたか」がわかります。
費用を全て集めれば、「(b)当期においてどれだけお金が出ていったか」がわかります。
そして、(a)から(b)を差し引けば、「当期においてどれだけもうけが出たのか」がわかります。つまり、損益勘定とは、当期のもうけ=当期純利益を算出するための勘定科目といえます。
本問では、売上勘定にある残高をゼロにするために、損益勘定に振り替える仕訳をします。
売上は「収益」ですから、増加すると貸方(右)に金額が蓄積されていきます。
本問では売上残高が貸方に800,000円あると示されています。これが意味するのは、当期の売上総額は800,000円である、ということです。
売 上 | 800,000 |
それでは、この売上の貸方残高をゼロにするために、損益勘定に振り替えます。
売上の貸方残高に800,000ある状態ですので、まずはこれをゼロにするには、売上を借方(左)に800,000計上すればいいのです。
売 上 | 800,000 |
これで、貸借で相殺がおこり、売上残高はゼロになりました。
そして、もともとあった売上の貸方800,000の金額を損益勘定に移します。つまり、損益の貸方に800,000を計上します。
売 上 | 800,000 | 損 益 | 800,000 |
まとめると、売上の貸方残高を減少させるので借方(左)に売上800,000、その分損益の貸方残高を増加させるので貸方(右)に損益800,000を示します。
以上の処理を示しているのが、解答の仕訳になります。
この処理を、「売上」だけでなく「受取利息」や「受取手数料」など、全ての収益で行います。
受取利息 | ××× | 損 益 | ××× |
受取手数料 | ××× | 損 益 | ××× |
このような仕訳を各収益ごとに行うので、全ての収益勘定の残高が、損益の貸方残高に集まることになります。
※収益が増加するときは貸方なので、損益勘定でも収益は貸方に集まると覚えればよいでしょう。
決算において、全ての収益・費用勘定は、その残高を損益勘定に振り替えることで残高ゼロにする
収益勘定については、元の残高が貸方(右)に蓄積しているので、それをゼロにするために借方(左)に同じだけの金額を計上する
※なお、勘定項目「損益」は、決算のときにのみ使う架空の勘定であるため、「決算勘定」という特別なグループになります。
2. 仕入勘定の借方残高¥340,000、給料勘定の借方残高¥210,000を損益勘定へ振り替える。
借 方 科 目 | 金 額 | 貸 方 科 目 | 金 額 |
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【解答】
損 益 | 550,000 | 仕 入 | 340,000 |
給 料 | 210,000 |
【解説】
本問も、問1と同じように、収益・費用勘定を損益勘定に振り替える処理を行います。
本問では、費用を損益に移し替えます。
仕入や給料は「費用」ですから、増加すると借方(左)に金額が蓄積されていきます。本問では仕入残高が借方に340,000円、給料残高が借方に210,000円あると示されています。これが意味するのは、当期の仕入総額は340,000円、給料総額は210,000円である、ということです。
仕 入 | 340,000 |
給 料 | 210,000 |
それでは、これら費用勘定の借方残高をゼロにするために、損益勘定に振り替えます。
仕入の借方残高に340,000ある状態ですので、これをゼロにするには、仕入を貸方(右)に340,000計上すればいいのです。
仕 入 | 340,000 |
これで、貸借で相殺がおこり、仕入残高はゼロになりました。
また、給料の借方残高に210,000ある状態ですので、これをゼロにするには、給料を貸方に210,000計上すればいいのです。
給 料 | 210,000 |
これで、貸借で相殺がおこり、給料残高はゼロになりました。
そして、これら費用勘定の借方340,000+210,000の金額を損益勘定に移します。つまり、損益の借方に550,000を計上します。
損 益 | 550,000 | 仕 入 | 340,000 |
給 料 | 210,000 |
まとめると、仕入の借方残高を減少させるので貸方(右)に仕入340,000、給料の借方残高を減少させるので貸方(右)に給料210,000を、その分損益の借方残高を増加させるので借方(左)に損益550,000を示します。
以上の処理を示しているのが、解答の仕訳になります。
この処理を、「仕入」や「給料」だけでなく「水道光熱費」や「支払手数料」など、全ての費用で行います。
損 益 | ××× | 水道光熱費 | ××× |
損 益 | ××× | 支払手数料 | ××× |
このような仕訳を各費用ごとに行うので、全ての費用勘定の残高が、損益の借方残高に集まることになります。
※費用が増加するときは借方なので、損益勘定でも費用は借方に集まると覚えればよいでしょう。
費用勘定については、元の残高が借方(左)に蓄積しているので、それをゼロにするために貸方(右)に同じだけの金額を計上する
3. 当期純利益¥100,000を繰越利益剰余金勘定へ振り替える。
借 方 科 目 | 金 額 | 貸 方 科 目 | 金 額 |
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【解答】
損 益 | 100,000 | 繰越利益剰余金 | 100,000 |
【解説】
問1の解説にて、損益勘定は当期純利益を算出するための勘定であると説明しました。
損益勘定の貸方(右)には全収益が集まり、借方(左)には全費用が集まります。
借方と貸方に残高がある場合は、そこで相殺がおこります。
つまり、損益の貸方残高から借方残高を差し引いて残った金額が、当期純利益の金額となります。
では、この当期純利益はどのように処理すればよいのでしょうか。損益勘定もまた、収益・費用の各勘定と同様に次期に繰り越すことはできません。次期の集計をするためには次期の損益勘定もゼロからのスタートでなければならないからです。
しかし、当期純利益はそれだけの利益が手元に残ったということですから、次期に繰り越す必要があります。
したがって、次期に繰り越すための勘定項目に振り替える処理を行います。ここで利用されるのが、勘定科目「繰越利益剰余金(資本)」です。
繰越利益剰余金は、「収益から費用を差し引いて余った利益を繰り越した金額」のことです。
繰越利益剰余金は次期に繰り越すことができる資本であり、増加すると貸方(右)に蓄積されていくので、当期に出た純利益(損益の貸方残高)をここに振り替えます。
以上の処理によって、損益勘定をゼロにすることができ、また当期純利益を次期に繰り越すことができるのです。
本問では、当期純利益が100,000円であるとあります。これが意味するのは、損益勘定に全収益(貸方)と全費用(借方)を集めて相殺した結果、全収益の方が100,000多かった、つまり損益が貸方残高100,000になったということを意味します。
たとえば、本問における全収益を500,000円、全費用を400,000円だと仮定しましょう。その場合、収益・費用が損益に振り替えられると次のようになります。
損 益 | 400,000 | 損 益 | 500,000 |
この結果、損益勘定の貸借で相殺が起きるので、貸方に100,000だけが残ります。
損 益 | 100,000 |
したがって、この損益残高を、繰越利益剰余金に振り替える仕訳をします。
損益の貸方残高に100,000ある状態なので、まずはこれをゼロにするには、損益を借方に100,000計上すればいいのです。
損 益 | 100,000 |
これで、貸借で相殺がおこり、損益残高はゼロになりました。
そして、損益の貸方にあった100,000を繰越利益剰余金勘定に移します。つまり、繰越利益剰余金を貸方に100,000計上します。
損 益 | 100,000 | 繰越利益剰余金 | 100,000 |
繰越利益剰余金は資本なので、増やすときは貸方(左)、減らすときは借方(右)に記入します。つまり、この仕訳は100,000円分繰越利益剰余金が増えたことを示します。
まとめると、損益の貸方残高を減少させるので借方(左)に損益100,000、その分繰越利益剰余金(資本・純資産)の貸方残高を増加させるので貸方(右)に繰越利益剰余金100,000を示します。
以上の処理を示しているのが、解答の仕訳になります。
当期純利益があるということは、全収益>全費用であり、損益勘定の貸方(右)に当期純利益となる金額の残高がある
最終的には損益勘定の残高はゼロにしなくてはいけないので、損益の残高を「繰越利益剰余金」へ振り替える
当期純利益がある=損益の貸方に残高がある場合は、その反対の借方(左)に同じだけ金額を計上すれば、損益残高はゼロになる
※なお、繰越利益剰余金は毎年繰り越されていきます。純利益を出し続ければ、繰越利益剰余金は年々加算されていきます。逆に、今後見ていくように繰越利益剰余金が減少する場合もあります。
4. 当期純損失¥80,000を繰越利益剰余金勘定へ振り替える。
借 方 科 目 | 金 額 | 貸 方 科 目 | 金 額 |
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【解答】
繰越利益剰余金 | 80,000 | 損 益 | 80,000 |
【解説】
全収益>全費用となる場合は当期純利益になりますが、全収益<全費用となる場合は当期純損失となります。つまり、その期は赤字になってしまったということです。
では、この赤字をどのように処理すべきかというと、これまで貯めていた繰越利益剰余金を切り崩して赤字の補てんとします。つまり、その分の金額を繰越利益剰余金の残高から減らすのです。
したがって、当期純損失が出た場合の仕訳は、当期純利益が出た場合の仕訳と、形が逆の仕訳になります。
本問では、当期純損失が80,000円であるとあります。これが意味するのは、損益勘定に全収益(貸方)と全費用(借方)を集めて相殺した結果、全費用の方が80,000多かった、つまり損益が借方残高80,000になったということを意味します。
損 益 | 80,000 |
したがって、この損益残高を、繰越利益剰余金に振り替える仕訳をします。
損益の借方残高に80,000ある状態ですので、これをゼロにするには、損益を貸方に80,000計上すればいいのです。
損 益 | 80,000 |
これで、貸借で相殺がおこり、損益残高はゼロになりました。
そして、損益の借方にあった80,000を繰越利益剰余金勘定に移します。つまり、繰越利益剰余金の借方に80,000を計上します。
繰越利益剰余金 | 80,000 | 損 益 | 80,000 |
繰越利益剰余金は資本なので、増やすときは貸方(左)、減らすときは借方(右)に記入します。つまり、この仕訳は80,000円分繰越利益剰余金が減った(赤字の補てんとして切り崩した)ことを示します。
まとめると、損益の借方残高を減少させるので貸方(右)に損益80,000、その分繰越利益剰余金を減少させるので借方(左)に繰越利益剰余金80,000を示します。
以上の処理を示しているのが、解答の仕訳になります。
当期純損失があるということは、全収益<全費用であり、損益勘定の借方(左)に当期純損失となる金額の残高がある
当期純損失がある=損益の借方に残高がある場合は、その反対の貸方(右)に同じだけ金額を計上すれば、損益残高はゼロになる
※なお、当期純損失が大きすぎて繰越利益剰余金ではまかないきれない場合がありえますが、それは日商簿記3級の範囲では出題されませんので、さしあたり本問の形を覚えれば問題ありません。
5. 当期の収益合計は¥1,810,000、費用合計は¥1,730,000であった。純損益を繰越利益剰余金勘定へ振り替える。
借 方 科 目 | 金 額 | 貸 方 科 目 | 金 額 |
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【解答】
損 益 | 80,000 | 繰越利益剰余金 | 80,000 |
【解説】
問題文に全収益額と全費用額が示されているので、自分で損益勘定の残高を計算してみましょう。
当期純損益:全収益1,810,000円-全費用1,730,000円=80,000円
全収益の方が80,000円多いということは、当期純利益が80,000円であり、損益勘定は貸方(右)残高80,000になっているということです。
損 益 | → 80,000 |
したがって、損益の貸方残高80,000を繰越利益剰余金に振り替える仕訳を行います。
損益の貸方残高80,000をゼロにするために、損益の借方に80,000計上します。そして、損益にあった貸方残高80,000を、繰越利益剰余金に移し替えます。
まとめると、損益の貸方残高を減少させるので借方(左)に損益80,000、繰越利益剰余金(資本・純資産)を増加させるので貸方(右)に繰越利益剰余金80,000を示します。
6. 当期の収益合計は¥1,350,000、費用合計は¥1,410,000であった。純損益を繰越利益剰余金勘定へ振り替える。
借 方 科 目 | 金 額 | 貸 方 科 目 | 金 額 |
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【解答】
繰越利益剰余金 | 60,000 | 損 益 | 60,000 |
【解説】
問題文に全収益額と全費用額が示されているので、自分で損益勘定の残高を計算してみましょう。
当期純損益:全収益1,350,000円-全費用1,410,000円=△60,000円
全費用の方が60,000円多いということは、当期純損失が60,000円であり、損益勘定は借方(左)残高60,000になっているということです。
損 益 | → 60,000 |
したがって、損益の借方残高60,000を繰越利益剰余金に振り替える仕訳を行います。
損益の借方残高60,000をゼロにするために、損益の貸方に60,000計上します。そして、損益にあった借方残高80,000を、繰越利益剰余金に移し替えます。
まとめると、損益の借方残高を減少させるので貸方(右)に損益60,000、繰越利益剰余金(資本・純資産)を減少させるので借方(左)に繰越利益剰余金60,000を示します。
7. 損益勘定の借方合計は¥550,000、貸方合計は¥800,000であった。差額を繰越利益剰余金勘定へ振り替える。
借 方 科 目 | 金 額 | 貸 方 科 目 | 金 額 |
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【解答】
損 益 | 250,000 | 繰越利益剰余金 | 250,000 |
【解説】
本問の問題文では、当期の収益がいくら、費用がいくらとは示されていません。
しかし、損益勘定の借方に全費用が、貸方に全収益が集まることがわかっていれば、問題文から当期の純損益がわかります。
当期純損益:貸方(全収益)800,000円-借方(全費用)550,000円=250,000円
全利益>全費用ですので、その差額250,000は当期純利益ということになります。また、損益勘定の貸借で相殺をすると、損益残高は貸方250,000となります。
損 益 | → 250,000 |
したがって、損益の貸方残高250,000を繰越利益剰余金に振り替える仕訳を行います。
損益の貸方残高250,000をゼロにするために、損益の借方に250,000計上します。そして、損益にあった貸方残高250,000を、繰越利益剰余金に移し替えます。
まとめると、損益の貸方残高を減少させるので借方(左)に損益250,000、繰越利益剰余金(資本・純資産)を増加させるので貸方(右)に繰越利益剰余金250,000を示します。