仕訳プリント⑨ 前払前受未収未払
費用の前払い・未払い、収益の前受け・未収は、決算問題で様々な表現で出題されます。
練習:下記の決算整理事項を仕訳しなさい。なお、決算日はいずれも3月31日とする。
<第131,132,133回>
第134,135,150回
※このページで金額を(¥ )のように表示してあるものは、実際には文章の中ではなく、決算整理前の試算表にある金額である。実際の第3問財務諸表問題では自分で試算表を見ながら計算して仕訳する必要がある。
第131回
1. 受取手数料の前受額は¥10,400である。
借 方 科 目 | 金 額 | 貸 方 科 目 | 金 額 |
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【解答】
受取手数料 | 10,400 | 前受手数料 | 10,400 |
【解説】
収益・費用は、「この1年間(会計期間)でどれだけお金が入ってきたのか、出ていったのか」を計るための項目です。つまり、会計期間が終わったらリセットされて、新年度になったら改めて0から数え始めます。つまり、当期から次期には繰り越さないのです。
しかし、中には次期に繰り越さなければならないものもあります。それが今回のテーマです。
問題文が意味するのは、「期中に計上した受取手数料のうち、10,400円分が本来なら当期ではなく次期に計上すべきものであり、それを本来受け取るべき次期の前に受け取った」ことを意味します。
したがって、その10,400円分の受取手数料を次期に繰り越さなければなりません。
しかし、上述したように、収益・費用は次期に繰り越すことができません。ならばどうしましょうか。
そこで、決算において、繰り越すことができない収益・費用を、繰り越すことができる資産・負債に振り替える処理を行います。
本問では、受取手数料(収益)を10,400円分減らし、それを勘定科目「前受手数料(負債)」に振り替えます。こうすることで、本来当期に計上すべきでなかった受取手数料10,400円分を減らすことができ、また同時に、次期に計上すべき受取手数料を次期へと繰り越すことができるのです。
なお、前受手数料は「事前に手数料を受け取ったため、あとでその分のサービスを提供しなければならない義務」といえるので、負債になります。
受取手数料(収益)を減少させるので借方(左)に受取手数料10,400、その分前受手数料(負債)を増加させるので貸方(右)に前受手数料10,400を示します。
本来、当期ではなく次期に計上しなくてはならない収益・費用がある場合は、それらを決算において資産・負債に振り替えて次期に繰り越す処理をする
2. 貸付金のうち、¥200,000は10月1日に、貸付期間1年、年利4%で貸し付けたものであるが、この分にかかわる決算日までの利息が未収である。なお、利息の計算は月割りによる。
借 方 科 目 | 金 額 | 貸 方 科 目 | 金 額 |
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【解答】
未収利息 | 4,000 | 受取利息 | 4,000 |
【解説】
本問を整理すると、次のようになります。
・貸付金:200,000円
・貸し付けた日:10月1日
・貸付期間:1年
・年利:4%
・決算日(3月31日)までの利息が未収
・利息の計算は月割り
以上からわかることは次の通りです。
・貸付金の1年間の利息:貸付金200,000円×年利4%=8,000円
・当期の貸し付けた期間:10,11,12,1,2,3月の計6か月(10/1~3/31)
・本来当期に受け取るべき利息: 8,000円÷12か月×6か月=4,000円
(12か月で8,000を割れば、1か月分の利息金額が出ます。そこに6か月を掛ければ、6か月分の利息金額が出ます。)
当期に計上すべき受取利息4,000円を、期末においてまだ受け取れていないことがわかりました。
したがって、当期に計上すべき受取利息を計上し、それを勘定科目「未収利息(資産)」で記録して繰り越す処理をします。
こうすることで、「当期に、収益である受取利息4,000円を受け取るに値するサービス(お金を貸したこと)を提供した」ことと、「次期に、その利息4,000円を受け取れるだろうと見越している」ことを、帳簿上に記録として残すことができます。
なお、未収利息は「あとで利息を受け取ることができる権利」といえるので、資産になります。
受取利息(収益)を増加させるので貸方(右)に受取利息4,000、その分未収利息(資産)を増加させるので借方(左)に未収利息4,000を示します。
3. 保険料(¥32,400)は、3月1日に保険に新たに加入し、向こう1年分を支払ったものである。
借 方 科 目 | 金 額 | 貸 方 科 目 | 金 額 |
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【解答】
前払保険料 | 29,700 | 保険料 | 29,700 |
【解説】
本問を整理すると、次のようになります。
・保険料1年分で32,400円
・3月1日に加入
以上からわかることは次の通りです。
・保険の適用期間は今年3月~来年2月の12か月
・当期において保険が適用されるのは今年3月の1か月
・残りの今年4月~来年2月までの11か月分は、次期の分として計上すべきである
・次期に適用される11か月分の保険料の金額:1年分32,400円÷12か月×11か月=29,700円
当期に支払った保険料32,400円のうち、29,700円分は次期に繰り越すべきであることがわかりました。
したがって、次期に計上すべき保険料を当期の保険料から減らし、それを勘定科目「前払保険料(資産)」で記録して次期に繰り越す処理をします。
なお、前払保険料は「前払してある保険料分、あとで保険サービスの提供を受けることができる権利」といえるので、資産になります。
保険料(費用)を減少させるので貸方(右)に保険料29,700、その分前払保険料(資産)を増加させるので借方(左)に前払保険料29,700を示します。
期中に「費用を向こう1年分支払った」「収益を向こう1年分受け取った」場合は、その中に次期分も含まれているため、決算において繰り越すための処理をする(※期首ならば期末で1年分が完了するため次期には繰り越さない)
4. 広告宣伝費の前払額は¥3,800である。
借 方 科 目 | 金 額 | 貸 方 科 目 | 金 額 |
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【解答】
前払広告宣伝費 | 3,800 | 広告宣伝費 | 3,800 |
【解説】
「広告宣伝費の前払額」とは、次期に計上すべきなのに、当期に前払いした広告宣伝費のことです。
したがって、次期に計上すべき広告宣伝費の前払分3,800円を減らし、それを勘定科目「前払広告宣伝費(資産)」で記録して繰り越す処理をします。
前払広告宣伝費は「前払してある広告宣伝費分、あとで広告宣伝サービスを受けることができる権利」といえるので、資産になります。
広告宣伝費(費用)を減少させるので貸方(右)に広告宣伝費3,800を、その分前払広告宣伝費(資産)を増加させるので借方(左)に前払広告宣伝費3,800を示します。
5. 借入金のうち、¥400,000は当期の7月1日に、借入期間2年、年利5%で借り入れたものであるが、この分にかかわる決算日までの利息が未払いである。なお、利息の計算は月割りによる。
借 方 科 目 | 金 額 | 貸 方 科 目 | 金 額 |
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【解答】
支払利息 | 15,000 | 未払利息 | 15,000 |
【解説】
本問を整理すると、次のようになります。
・借入金:400,000円
・借り入れた日:7月1日
・借入期間:2年
・年利:5%
・決算日(3月31日)までの利息が未払い
・利息の計算は月割り
以上からわかることは次の通りです。
・借入金の1年間の利息:借入金400,000円×年利5%=20,000円
・当期の借り入れた期間:7,8,9,10,11,12,1,2,3月の計9か月(7/1~3/31)
・本来当期に支払うべき利息: 20,000円÷12か月×9か月=15,000円
(電卓で計算する際には、12で割ってから9を掛けると小数点が出てしまうので、最初に9を掛けて、次に12で割るようにしてください。)
当期に計上すべき支払利息15,000円を、期末においてまだ支払っていないことがわかりました。
したがって、当期に計上すべき支払利息を計上し、それを勘定科目「未払利息(負債)」で記録して繰り越す処理をします。
こうすることで、「当期に、費用である支払利息15,000円を支払うに値するサービス(お金を借りたこと)を受けた」ことと、「次期以降に、その利息15,000円を支払うだろうと見越している」ことを、帳簿上に記録として残すことができます。
なお、未払利息は「あとで利息を支払わなければならない義務」といえるので、負債になります。
支払利息(費用)を増加させるので借方(左)に支払利息15,000、その分未払利息(負債)を増加させるので貸方(右)に未払利息15,000を示します。
第132回
1. 保険料(¥120,000)は、8月1日に向こう1年分を支払ったものである。
借 方 科 目 | 金 額 | 貸 方 科 目 | 金 額 |
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【解答】
前払保険料 | 40,000 | 保険料 | 40,000 |
【解説】
問題文からわかるのは次の通りです。
・保険の適用期間は今年8月~来年7月の12か月
・当期において保険が適用されるのは今年8月~来年3月の8か月
・残りの来年4月~7月までの4か月分は、次期の分として計上すべきである
・次期に適用される4か月分の保険料の金額:1年分120,000円÷12か月×4か月=40,000円
当期に支払った保険料120,000円のうち、40,000円分は次期に繰り越すべきであることがわかりました。
したがって、次期に計上すべき保険料を当期の保険料から減らし、それを前払保険料(資産)に振り替えます。
保険料(費用)を減少させるので貸方(右)に保険料40,000、その分前払保険料(資産)を増加させるので借方(左)に前払保険料40,000を示します。
2. 受取家賃の前受分が¥20,000ある。
借 方 科 目 | 金 額 | 貸 方 科 目 | 金 額 |
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【解答】
受取家賃 | 20,000 | 前受家賃 | 20,000 |
【解説】
「受取家賃の前受分」とは、次期に計上すべきなのに、当期に前受けした受取家賃のことです。
したがって、次期に計上すべき受取家賃の、前受分20,000円を減らし、それを勘定科目「前受家賃(負債)」で記録して繰り越す処理をします。
前受家賃は「前受けしてある受取家賃分、あとで賃貸サービスを提供しなければならない義務」といえるので、負債になります。
受取家賃(収益)を減少させるので借方(左)に受取家賃20,000、その分前受家賃(負債)を増加させるので貸方(右)に前受家賃20,000を示します。
第133回
1. 保険料¥13,440は、当期の7月1日に保険に加入し、向こう1年分(12か月分)の保険料を一括して支払ったものである。
借 方 科 目 | 金 額 | 貸 方 科 目 | 金 額 |
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【解答】
前払保険料 | 3,360 | 保険料 | 3,360 |
【解説】
問題文からわかるのは次の通りです。
・保険の適用期間は今年7月~来年6月の12か月
・当期において保険が適用されるのは今年7月~来年3月の9か月
・残りの来年4月~6月までの3か月分は、次期の分として計上すべきである
・次期に適用される4か月分の保険料の金額:1年分13,440円÷12か月×3か月=3,360円
当期に支払った保険料13,440円のうち、3,360円分は次期に繰り越すべきであることがわかりました。
したがって、次期に計上すべき保険料を当期の保険料から減らし、それを前払保険料(資産)に振り替えます。
保険料(費用)を減少させるので貸方(右)に保険料3,360、その分前払保険料(資産)を増加させるので借方(左)に前払保険料3,360を示します。
2. 借入金のうち¥60,000は、当期の12月1日に借入期間9か月、利率年2.3%の条件で借り入れたものであり、借入れに伴う利息は返済期日に元金とともに一括して支払うことになっている。
借 方 科 目 | 金 額 | 貸 方 科 目 | 金 額 |
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【解答】
支払利息 | 460 | 未払利息 | 460 |
【解説】
本問を整理すると、次のようになります。
・借入金:60,000円
・借り入れた日:12月1日
・借入期間:9か月
・利率年2.3%
・返済日に利息を支払う予定なので、決算日(3月31日)までの利息が未払い
以上からわかることは次の通りです。
・借入金の1年間の利息:借入金60,000円×年利2.3%=1,380円
(借入期間は9か月ですが、利息の利率は1年単位なので、まずは1年分の利息を算出します。)
・当期の借り入れた期間:12,1,2,3月の計4か月(12/1~3/31)
・本来当期に支払うべき利息:1,380円÷12か月×4か月=460円
当期に計上すべき支払利息460円を、期末においてまだ支払っていないことがわかりました。
したがって、当期に計上すべき支払利息を計上し、それを未払利息(負債)という勘定科目で記録して繰り越す処理をします。
支払利息(費用)を増加させるので借方(左)に支払利息460、その分未払利息(負債)を増加させるので貸方(右)に未払利息460を示します。