第2問対策
次に示す×7年3月31日時点の固定資産台帳(備品部分)にもとづき、以下の問いに答えなさい。なお、備品は残存価額ゼロの定額法により減価償却が行われており、期中取得した備品の減価償却費は月割計算によって計上する。当期は×6年4月1日から×7年3月31日である。
(1) 固定資産台帳の空欄ア、イに入る適切な金額を記入しなさい。
(2) ×7年3月31日に行う備品に関する決算整理仕訳を答えなさい。
(3) 解答欄に示した各勘定の空欄を記入しなさい。
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本問は勘定記入問題の一つですが、そこに固定資産台帳の要素が加わっています。基本的な勘定記入問題では、提示された具体的な日々の取引を仕訳にし、それを勘定口座に転記します。しかし、本問のような問題では具体的な取引の内容が示されていません。転記のために必要な情報は、固定資産台帳から読み取らなくてはいけません。したがって、固定資産台帳の読み方をしっかり覚えておく必要があります。
一見すると、固定資産台帳は項目名が抽象的でわかりにくい印象を受けます。しかし、一度理解してしまえば、示されている内容はたいして難しくはありません。そのため、まずはそれぞれの項目名の解説を行います。
【取得年月日、名称等、期末数量、耐用年数】
これらの意味については特に解説は必要ないでしょう。本問では省略されていますが、利用場所や償却方法なども記載されます。
なお、取得年月日の確認は重要です。備品Aの取得日は×3年4月1日であり当期は期首から期末まで1年丸々使ったことになるので、減価償却も1年分行います。一方、備品Bの取得日は×6年8月1日であり、つまり当期の途中(期中)に取得したことがわかります。したがって、当期において取得の仕訳をしていることがわかりますし、当期は8月~3月までの8か月しか使用していないので、減価償却も1年分丸々するのではなく8か月分を行います。
【期首(期中取得)取得原価】
ここで示されているのは、固定資産を取得した際にかかった金額です。減価償却費の記帳方法が間接法である場合、この金額は売却などをしない限り取得時から変わりません。備品Aが2,500,000円、備品Bが1,200,000円となっていますが、これらはそれぞれの備品を取得した際の金額だということです。
なお、期首や期中取得は、「期首時点での」「期中で取得した時点での」ということを示しています。
【期首減価償却累計額】
ここで示されているのは、当期の開始時点での減価償却累計額を示しています。基本的に減価償却は決算のタイミングで行うので、前期決算で減価償却を行った結果、どれだけ減価償却累計額が溜まった状態で当期が始まったのかということがわかります。備品Aは750,000円となっていますが、これは当期の始まりの時点で750,000円分の減価償却が済んでいたということを示しています。一方、備品Bは0円です。これは、備品Bは当期の途中で取得したのでまだ一度も減価償却を行っておらず、当期の始まり時点には減価償却累計額の計上自体していないことを示しています。
【差引期首(期中取得)帳簿価額】
ここで示されているのは、期首時点、もしくは期中で取得した時点での固定資産の実質的な価値です。固定資産を取得してから何年も使って減価償却していけば、固定資産の実際の価値は減少していきます。この帳簿の上で示される実質的な金額のことを、帳簿価額といいます。帳簿価額は、取得原価-減価償却累計額によって求めることができます。一番初めの価値(取得原価)から、経年劣化や使用による消耗などで減少してしまった金額(減価償却累計額)を差し引けば、その時点での固定資産の実質的な価値(帳簿価額)が判明します。固定資産台帳の項目名で言えば、「期首(期中取得)取得原価-期首減価償却累計額=差引期首(期中取得)帳簿価額」という計算式が成り立ちます。
備品Aは空欄アになっていますが、以上の計算式で簡単に求めることができます。
備品Aの差引期首帳簿価額:取得原価2,500,000円-期首減価償却累計額750,000円=(ア)1,750,000円
元々の価値が2,500,000円で、そこから当期首までに減価償却で750,000円分の価値が減じたので差し引いて、当期首時点での備品Aの価値(帳簿価額)は1,750,000円だということです。
一方、備品Bは1,200,000円で期首(期中取得)取得原価と変わりありません。これは当然のことで、当期の期中に取得した時点では減価償却累計額は0円なのですから、取得原価と帳簿価額は同額になります。
備品Bの期中取得帳簿価額:期中取得取得原価1,200,000円-期中取得減価償却累計額0円=1,200,000円
【当期減価償却費】
これも解説は必要ないでしょう。問題文に備品の減価償却は残存価額ゼロの定額法、期中取得は月割計算とあるので、その通りに減価償却費を計算すれば、記載されている減価償却費の金額になります。
備品Aの減価償却費:取得原価2,500,000円÷耐用年数10年=250,000円
備品Bの減価償却費:取得原価1,200,000円÷耐用年数5年÷12か月×8か月=160,000円
【期末帳簿価額】
ここで示されているのは、当期決算で当期の減価償却を済ました後の期末時点での帳簿価額です。期首時点、もしくは期中取得時点での帳簿価額から当期の減価償却費を差し引けば求めることができます。固定資産台帳の項目名で言えば、「差引期首(期中取得)帳簿価額-当期減価償却費=期末帳簿価額」という計算式が成り立ちます。
備品Aの期末帳簿価額:差引期首帳簿価額1,750,000円-当期減価償却費250,000円=1,500,000円
期首時点での実質的な価値が1,750,000円で、そこから当期の減価償却で250,000円分の価値が減じたので、当期末時点での備品Aの価値(帳簿価額)は1,500,000円だということです。
備品Bの期末帳簿価額:期中取得帳簿価額1,200,000円-当期減価償却費160,000円=(イ)1,040,000円
期中取得時点での価値が1,200,000円で、そこから当期8か月分の減価償却で160,000円分の価値が減じたので、当期末時点での備品Bの価値(帳簿価額)は1,040,000円だということです。
なお、この期末帳簿価額は問題で省略されることがあります。
転記のための情報
それでは実際に問題を解く上で、固定資産台帳から勘定口座へ記入するために必要な情報を読み取っていきましょう。
まず、備品勘定の前期繰越は、当期首時点で前期から繰り越されてきた備品の金額なので、備品Aの期首取得原価である2,500,000円を記入します(備品B1,200,000円は期首時点にはなかったのでここには含まれません)。
備品減価償却累計額勘定の前期繰越の金額は、当期首時点で前期から繰り越されてきた備品減価償却累計額の金額なので、備品Aの期首減価償却累計額である750,000円を記入します。
そして、当期における備品に関わる取引の内容もつかめます。
備品Bの取得年月日や期中取得原価から、×6年8月1日に備品1,200,000円を取得したことがわかります。備品勘定の×6年9月1日の摘要欄に未払金が記入されているので、その支払いは未払金で処理していたということもわかります。
また、当期減価償却費から、備品Aを250,000円、備品Bを160,000円の計410,000円の減価償却を行ったことがわかります。したがって、決算では減価償却費410,000円を計上し、それを備品減価償却累計額として処理する(2)の決算整理仕訳を行っています。
以上、固定資産台帳の解説を行いました。固定資産の基本的なことを丁寧かつ詳細に記録しているので、ある意味くどく感じるかもしれません。もちろん、実務ではもっと簡略化されることはありえます。また、表計算ソフトなどを活用して管理がしやすいようになっています。しかし、多種多様な固定資産を適切に管理していくために、固定資産台帳による記録は重要です。
固 定 資 産 台 帳 | ×7年3月31日現在 |
取得年月日 | 名称等 |
期末 数量 |
耐用 年数 |
期首(期中取得) 取得原価 |
期首 減価償却累計額 |
差引期首(期中取得) 帳簿価額 |
当期 減価償却費 |
期末 帳簿価額 |
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備品 | ||||||||
×3年4月1日 | 備品A | 10台 | 10年 | 2,500,000円 | 750,000円 |
円
|
250,000円 | 1,500,000円 |
×6年8月1日 | 備品B | 8台 | 5年 | 1,200,000円 | 0円 | 1,200,000円 | 160,000円 |
円
|
小 計 | 3,700,000円 | 750,000円 | 2,950,000円 | 410,000円 | 2,540,000円 |
(2)決算整理仕訳
借方科目 | 金 額 | 貸方科目 | 金 額 |
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(3)
備 品 | |||||
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×6/4/1
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前期繰越
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2,500,000
|
×7/3/31
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次期繰越
|
|
×6/8/1
|
未払金
|
|
|||
|
|
減価償却費 | |||||
---|---|---|---|---|---|
×7/3/31
|
備品減価償却累計額
|
|
×7/3/31
|
損益
|
|
備品減価償却累計額 | |||||
---|---|---|---|---|---|
×7/3/31
|
次期繰越
|
|
×6/4/1
|
前期繰越
|
|
×7/3/31
|
減価償却費
|
|
|||
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