×1年4月1日に設立された長野株式会社における以下の[資料]にもとづいて、次の問いに答えなさい。

(1)第3期における繰越利益剰余金勘定と損益勘定の空欄に入る適切な日付、語句または金額を記入しなさい。

(2)第3期における税引前当期純利益を答えなさい。

[資料]
第1期(×1年4月1日から×2年3月31日まで)

・決算において、当期純利益900,000円を計上した。

・第1期には配当を行っていない。

第2期(×2年4月1日から×3年3月31日まで)

・決算において、当期純損失200,000円を計上した。

・第2期には配当を行っていない。

第3期(×3年4月1日から×4年3月31日まで)

・6月20日開催の株主総会において、繰越利益剰余金残高から次のように処分することが決議された。

株主配当金 ¥120,000   配当に伴う ( ① ) の積立て ¥12,000

・6月25日に、株主配当金120,000円を普通預金から支払った。

・決算において、決算整理後の収益および費用の各勘定残高(法人税等を除く)は以下の損益勘定のとおりであった。当期の法人税等は、税引前当期純利益に対して30%である。

・当期純利益¥( ② )を計上した。

解き方のガイドここをクリック

本問では、「繰越利益剰余金」「損益」勘定が求められています。
その上で、次の手順で問題を解いていきます。

①問題から取引を読み解き、仕訳する
本問ではポイントが3つあります。まず、そのうちの2つのポイントを見てみましょう。

I.<複数年度の捉え方>

本問では、第1~3期までの取引が提示されています。しかし、求められているのは第3期の各勘定口座への記入です。したがって、第1期と第2期の取引は、第3期の何らかの金額を導き出すために示されているということが読み取れます。

II.<損益勘定と繰越利益剰余金勘定の関係>

決算で行う収益や費用の締め切りにおいて、それらの残額は全て損益勘定に振り替えられます。そうすることで、当期どれだけお金が入ってきたのか(収益)、当期どれだけお金が出ていったのか(費用)が損益勘定にまとめられます。そして、その貸借で相殺し、残った差額が当期の純利益(もしくは純損失)となります。
しかし、損益勘定も締め切りをしなくてはいけません。損益勘定は1年間の収益・費用を集めて計算する勘定なので、これも収益や費用と同じように年度の終わりには残高をゼロにしてリセットしなくてはいけません。
その損益勘定にあった残高の移動先(振替先)が繰越利益剰余金勘定です。繰越利益剰余金は資本(純資産)なので、締め切りでリセットせず繰り越すことができます。決算において、当期の純利益・純損失を損益から繰越利益剰余金へ振り替えるという処理を毎年行うので、純利益が出れば繰越利益剰余金が増加し、純損失が出れば繰越利益剰余金が減少することになります。なお、繰越利益剰余金は資本(純資産)なので、増加したら貸方(右)に、減少したら借方(左)に書くことを注意してください。

これらのことを前提に、第1期、第2期の取引を見てみましょう。

【第1期(×1年4月1日から×2年3月31日まで)】

×2/3/31 決算において、当期純利益900,000円を計上した。
これが意味するのは、「損益勘定に収益と費用を集めたら、収益の方が900,000円多かった=損益勘定の貸方残高900,000円になった」ということです。損益勘定も締め切りますので、この損益勘定の貸方残高を繰越利益剰余金勘定に振り替える仕訳をします。
損益貸方残高900,000円をゼロにするために、損益に借方900,000円を計上して、その分繰越利益剰余金を増やすというように仕訳をしましょう。
第1期に会社が設立されているので、繰越利益剰余金の増減は第1期の決算が初になります(繰越利益剰余金の元々の残高はゼロ)。したがって、この仕訳によって第1期終了時点での繰越利益剰余金残高は900,000円になりました。
なお、第1期には配当を行っていないので配当に関する仕訳はありません。

【第2期(×2年4月1日から×3年3月31日まで)】

×3/3/31 決算において、当期純損失200,000円を計上した。
今度は純損失の計上です。これが意味するのは、「損益勘定に収益と費用を集めたら、費用の方が200,000円多かった=損益勘定の借方残高200,000円になった」ということです。締め切りとして、損益勘定の借方残高を繰越利益剰余金勘定に振り替える仕訳をします。
第1期とは逆で、損益借方残高200,000円をゼロにするために、損益に貸方200,000円を計上して、その分繰越利益剰余金を減らすというように仕訳をしましょう。
この仕訳によって、繰越利益剰余金残高は200,000円減少したことになります。したがって、第2期終了時点での繰越利益剰余金残高は次のように計算できます。
 第2期終了時点での繰越利益剰余金残高:  -  = 
残高ゼロの状態から第1期に900,000円増加し、第2期に200,000円減少したので、第2期終了時点では繰越利益剰余金残高は700,000円になっているはずです。
第2期にも配当を行っていないので配当に関する仕訳はありません。

【第3期(×3年4月1日から×4年3月31日まで)】

×3/6/20 6月20日開催の株主総会において、繰越利益剰余金残高から次のように処分することが決議された。
  株主配当金 ¥120,000  配当に伴う ( ① ) の積立て ¥12,000
もうけた利益を全額配当にしてしまっては、いざというときに資金ショートしてしまう危険性が高まります。これを防ぐため、配当するときには同時に「利益準備金」を積み立てることが法律で決められています。
したがって、繰越利益剰余金を取り崩して配当金と①利益準備金にあてる仕訳をします。なお、配当の支払いは決まりましたがこの時点ではまだ払っていないため、勘定科目は未払配当金です。

×3/6/25 6月25日に、株主配当金120,000円を普通預金から支払った。
一連の流れの中の取引であるため仕訳はしましたが、繰越利益剰余金勘定・損益勘定が出てこないため、転記すべきものはありません。
×4/3/31 決算において、決算整理後の収益および費用の各勘定残高(法人税等を除く)は以下の損益勘定のとおりであった。当期の法人税等は、税引前当期純利益に対して30%である。
まず、前半部分を読み解きます。解答欄の損益勘定を見ると、相手勘定が収益の売上、費用の仕入・給料・減価償却費・支払家賃の取引が示されています。これは、各収益・費用勘定の締め切りを行い、それらの残高を損益勘定に振り替えた結果です。
たとえば、売上は当期7,460,000円計上されました。売上は収益であるため、残高は貸方にあります。締め切りでその売上残高を損益勘定に振り替えたので、次のような仕訳を行っています。
売上 7,460,000  損益 7,460,000
この仕訳の転記として、解答欄の損益勘定貸方に ×4/3/31 売上 7,460,000 が記入されているのです。同じようにして、仕入などの費用も転記が済んでいます。
このため、当期においてどれだけ収益・費用が発生したのかが損益勘定からわかります。
収益合計は売上7,460,000円しかないので、円です。
費用としては仕入、給料、減価償却費、支払家賃が発生しているので、当期の費用はそれらの金額、つまり損益勘定の借方の金額を合計すればいいのです。
 費用合計: 仕入3,800,000円 + 給料1,210,000円 + 減価償却費1,000,000円 + 支払家賃910,000円= 
以上から、当期の収益・費用が判明しました。したがって、収益合計から費用合計を差し引けば、税引前当期純利益がわかります。
ここで3つ目のポイントです。現在の費用合計には法人税等が含まれていません。このように、法人税等を引く前に出した当期純利益のことを「税引前当期純利益」といいます。
いったん税引前当期純利益を計算し、そこに税率をかけることで法人税等の金額を出します。
したがって、税引前当期純利益を計算すると次のようになります。
 税引前当期純利益:  -  = 
税引前当期純利益が出たら、取引の後半部分にあるように、そこに税率30%をかけることで法人税等の金額を計算します。
 法人税等:  × 税率30% = 
支払うべき法人税等の金額がわかったら、その仕訳をします。
法人税等
未払法人税等
この仕訳には繰越利益剰余金勘定・損益勘定が出てこないので転記するものはありません。
法人税等を計上する仕訳をしたばかりですが、決算なのですぐに法人税等の締め切りを行います。法人税等は費用なので、損益に振り替える仕訳をします。
この仕訳には損益が出てくるので転記します。
また、税引前当期純利益から法人税等を差し引くことで、最終的な当期純利益を出します。
 当期純利益:  -  = 
計算すれば、当期純利益は378,000円となるはずです。これは、費用よりも収益の方が378,000円多かったということです。
それを損益勘定として表現すれば、損益勘定の貸方に残高378,000円あるということです。
そして、損益勘定も締め切りを行う必要があります。上で述べたように、損益勘定の残高を繰越利益剰余金勘定に振り替えます。

②仕訳から勘定口座への転記
それぞれの仕訳ができたなら、それを各勘定口座へ転記します。
解説が長くなってしまったので、上で行い転記が必要な仕訳を整理します(自動入力されます)。

第2期から第3期に繰り越されてきた繰越利益剰余金: 
×3/6/20 繰越利益剰余金の処分
×4/3/31 法人税等を損益へ振り替える
×4/3/31 損益を繰越利益剰余金へ振り替える


③各勘定の締め切りを行う
本問は決算の問題なので、各勘定に応じた締め切りを行います。
(a)繰越利益剰余金勘定
繰越利益剰余金は資本です。貸借対照表に区分される項目は次期に繰り越すことができます。この締め切りの処理方法は、決算時に残っていて次期に繰り越す残高を、残高がある方とは逆に次期繰越として記入します。繰越利益剰余金は資本であり、残高があるのは貸方なので、次期繰越は借方に記入します。
支払家賃は費用です。損益計算書に区分される項目は次期に繰り越すことができないので、決算のタイミングでリセットしなければなりません。その際の処理は、支払家賃の残高の全額を損益勘定に振り替えるというものでした。したがって、支払家賃の借方残高をゼロにするために支払家賃の借方残高と同額を貸方に計上し、その分損益勘定の借方を増やします。

(b)損益勘定
すでに上で締め切りの仕訳を行っています。損益勘定はリセットするため振り替えますが、振替先は繰越利益剰余金です。

④税引前当期純利益の算定
税引前当期純利益の金額が求められています。勘定記入問題を解く流れで、すでに税引前当期純利益が算出されています。

税引前当期純利益: 
(1)
繰越利益剰余金
 ×3//
未払配当金
×3/4/1
前期繰越
×4/3/31
×4/3/31
×4/4/1

損 益
×4/3/31
仕入
3,800,000
×4/3/31
売上
7,460,000
給料
1,210,000
減価償却費
1,000,000
支払家賃
910,000

(2)税引前当期純利益 ¥