本問は先入先出法による商品有高帳の問題です。基本的な解き方は先入先出法①と同じです。商品有高帳に記録する金額は仕入価格であることなどに注意してください。
しかし、本問では何点か新たな要素が付け加えられています。

1. 対象とする商品を明確にする

本問では「X商品」の商品有高帳が問われています。しかし、問題には「X商品」だけでなく「Y商品」に関する取引も示されています。では、この「Y商品」の取引は何なのかというと、端的に言えばひっかけです。「Y商品」に関しては無視して、問われている「X商品」の取引にだけ着目してください。紛らわしいので、誤って「Y商品」の数値を記入してしまうことがあります。十分注意してください。

2. 売上戻り（売上返品）

問題文に売上戻りの取引が示されています。売上戻りは品違いや不良品などのために、売り上げた商品が返品される取引です。返品されたのですから、手元にある商品はその分増加します。したがって、商品有高帳において商品の受け入れとして記録しましょう。
また、どの単価の商品を受け入れるのかに注意してください。本問では11日の取引の際に、前期繰越の商品（＠400円）と5日仕入の商品（＠410円）を売り上げました。そして、売上戻りとして返品されたのは5日仕入の商品なので、売上戻りは＠410円で記録します。どの単価の商品が返品されたのかは指示されるので、指示された方の単価で記録してください。
そして、この売上戻りは売上高に影響します。商品の売り上げが取り消されたのですから、その分売上は減少します。したがって、売上高を計算する際には、売上の合計金額から売上戻りの金額を差し引く必要があります。

なお、問題によっては仕入戻しが扱われる場合もあります。仕入戻しは受け入れた商品を返品して手元から減るので、商品の払い出しとして記録します。詳しくは移動平均法②の解き方のガイドを参照してください。

3. 次月繰越・前月繰越・合計欄

本問の商品有高帳には、次月繰越と合計、さらに10月の前月繰越を記入する欄があります。
それぞれ、記入する数値や場所に注意してください。9月31日の摘要欄は、月末なので次月に繰り越す残高を記録します。つまり次月繰越です。一方、10月1日の摘要欄は月初なので前月から繰り越されてきた残高を記録します。つまり前月繰越です。
次月繰越の記入欄には、月末時点で残っている商品の残高、つまり次月に繰り越す商品の残高を「払出」欄に記入します。次月（本問では10月）になったら前月繰越として「受入」欄に同じ額を記入します。勘定口座の記入でも、次期繰越は残高のある方とは逆に記入して、前期繰越を残高のある方に記入していましたね。もしくは、「在庫に残った商品を当月という倉庫から出して、次月という倉庫に入れる」と考えればわかりやすいかもしれません。
また、次月繰越の直後に合計欄があります。形としては次月繰越と前月繰越の間に挟まれています。合計欄の上部に実線が書かれていて、ここで当月の受入欄と払出欄を合計するということを示しています。次期繰越として払出欄に期末残高が記入されているので、受入欄と払出欄の合計は等しくなるはずです。なお、単価は合計する意味がないので、数量と金額の合計を記入します。そして、合計を記入したらその下に二重線を書き込んで、当月の締め切りを行います。これも勘定口座と同じですね。

次月繰越、合計欄、次月の前月繰越に関しては出題パターンが3つあります。それら全てを書かせるパターン、全てが省略されるパターン、当月の締め切り（次月繰越・合計欄）まで書かせて次月の前月繰越は省略するパターンです。