第2問対策
次の各取引について、下記のように各伝票を作成したとして、伝票の空欄部分に入るのに最も適した勘定科目・金額を示しなさい。
(1-A) 商品300,000円を売り上げ、代金のうち100,000円は現金で受け取り、残りは掛けとした。
入 金 伝 票 | ||
売 上 | 100,000 |
振 替 伝 票 | |||
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
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日々の取引を記録する方法として、ノートなどを仕訳日記帳として仕訳を記入していく方法もありますが、伝票を使った方法もあります。
伝票には入金伝票、出金伝票、振替伝票という3種類の伝票があり、取引に応じて使い分けています(三伝票制)。なお、伝票に記入することを「起票する」といいます。「記(しるす)」の字ではなく、「起(おこす)」の字で「起票」で間違いありません。
入金伝票は、読んで字のごとく現金が入ってくる取引に使用します。つまり、「現金 ×× ●● ××」という形の仕訳の場合に使います(●●は何らかの勘定科目)。現金が増加したことが前提なので、貸方科目●●とその金額××さえ記入すれば起票は完了です(実際は伝票No.や取引の詳細などを書く欄があります)。
出金伝票は、読んで字のごとく現金が出ていく取引に使用します。つまり、「●● ×× 現金 ××」という形の仕訳の場合に使います。現金が減少したことが前提なので、借方科目●●とその金額××さえ記入すれば起票は完了です。
そして、振替伝票は、現金の出入以外の取引の際に使用します。振替伝票は、「●● ×× ■■ ××」という普通の仕訳の形をそのまま記入します。
こういった伝票を前提としたとき、1枚の伝票では記録しきれない取引が出てきます。代金の支払いや受け取りに際して、一部を現金で、残額を売掛金(未収入金)や買掛金(未払金)で処理する場合です。こういった一部現金取引を起票する際には、入金伝票もしくは出金伝票と、振替伝票を組み合わせることで対応します。基本的には、対象となる1つの取引を2つの仕訳に分解して、それぞれの仕訳を2枚の伝票に記入して起票します。
本問は、この1つの取引を2つの仕訳に分解して起票する必要があります。したがって、まずはこの取引の仕訳を考えてみましょう。仕訳は次のようになります。
現 金 | 100,000 | 売 上 | 300,000 |
売掛金 | 200,000 |
これが元となる仕訳です。売上代金を現金と売掛金で受け取っているので、一部現金取引になります。この仕訳を、入金伝票と振替伝票に起票できるように2つの仕訳に分解します。
仕訳を考える際に、解答欄の伝票に手掛かりが示されています。それは、明らかになっている入金伝票の内容です。入金伝票には「売上 100,000」と記入されているので、現金が入金(増加)され、その理由が売上であったということになります。仕訳にすると現金の増加で借方に現金100,000円、貸方が売上100,000円だったということがわかります。
手掛かりから分解する2つの仕訳の片方がわかったので、振替伝票に記入するもう1つの仕訳を考えてみましょう。
[入金伝票の仕訳] | 現 金 | 100,000 | 売 上 | 100,000 |
[振替伝票の仕訳] |
上の元になる仕訳と見比べてみましょう。何が足りないでしょうか。売上の貸方200,000円と売掛金の借方200,000円が足りないので、それらを計上する仕訳を加えてやりましょう。そうすれば、元の仕訳の金額と、入金伝票の仕訳と振替伝票の仕訳を合算した金額が同じ結果になります。したがって、この振替伝票の仕訳を振替伝票に起票するのが答えとなります。
この仕訳の分解は何を意味しているのでしょうか。本問では「商品300,000円を売り上げ、代金のうち100,000円は現金で受け取り、残りは掛けとした」という取引を、「商品100,000円を売り上げ、その代金は現金で受け取った」「商品200,000円を売り上げ、その代金は掛けとした」という2つの仕訳に分解して考え、それぞれに応じて入金伝票と振替伝票に起票することにしました。この分解方法は売上を分解する(2つに分ける)パターンといえるでしょう。
(1-B) 商品300,000円を売り上げ、代金のうち100,000円は現金で受け取り、残りは掛けとした。
入 金 伝 票 | ||
売掛金 | 100,000 |
振 替 伝 票 | |||
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
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本問の取引は(1-A)で示されたものと全く同じです。つまり、元となる仕訳も(1-A)と同じになります。
現 金 | 100,000 | 売 上 | 300,000 |
売掛金 | 200,000 |
それでは、(1-A)と何が違うのかというと、解答欄に示されている入金伝票の内容が異なっています。
入金伝票の内容について、(1-A)では「売上 100,000」となっていました。しかし、本問では「売掛金 100,000」となっています。本問の入金伝票が意味するのは、現金が100,000円入金(増加)され、貸方科目が売掛金100,000円だったということです。
その結果、分解後の仕訳が(1-A)とは異なることになります。
[入金伝票の仕訳] | 現 金 | 100,000 | 売掛金 | 100,000 |
[振替伝票の仕訳] |
ここが重要です。同じ取引(同じ仕訳)を元にしていても、分解後の仕訳が異なるということは、分解の仕方が異なっているのです。分解した片方の仕訳が(1-A)と異なるのだから、当然もう片方の仕訳も異なります。
それでは、振替伝票の仕訳としてどのように仕訳を作成すれば、元の仕訳と結果的に同じになるでしょうか。まず、売上300,000円が全く計上されていないのでこれを貸方に計上します。そして、本来は売掛金が借方に200,000円計上されていなければいけないのに、入金伝票の仕訳では貸方に100,000円計上されてしまっています。したがって、売掛金の貸方計上100,000円を打ち消した上で借方に200,000円計上されるように、売掛金を借方に合計300,000円計上します。このように振替伝票の仕訳を作成すれば、結果的に元の仕訳と金額や貸借の位置が一致します。
本問では「商品300,000円を売り上げ、代金のうち100,000円は現金で受け取り、残りは掛けとした」という取引を「商品300,000円を売り上げ、その代金全額300,000円を掛けとした」「売掛金300,000円のうち100,000円を即座に現金で回収した」という2つの仕訳に分解して考え、それぞれに応じて入金伝票と振替伝票に起票しています。
この分解方法は売掛金を分解する(2つに分ける)パターンといえます。このパターンは(1-A)と比べるとわかりにくいかもしれません。実際の取引で売掛金として処理したのは200,000円なのに、いったんとは言え代金全額の300,000円を売掛金とするのは違和感があるでしょう。しかし、いったん売掛金にして即座に現金として回収したと考えれば意味は通りますし、本来きれいに処理できない一部現金取引をうまく伝票で処理するのがこの方法なのです。たとえば、(1-A)のように売上300,000円という金額を分解したくない場合には、(1-B)の方法が活きてきます。
以上、1つの一部現金取引を起票するのに、2つの分解パターンがありました。こういった伝票問題が日商簿記3級で出題される場合、どちらのパターンで解答すべきなのかを自ら判断する必要があります。
解き方の流れとしては、まず問題文から元となる仕訳がわかります。そして、どちらの分解パターンなのかを判断するヒントとして、本問の入金伝票のように伝票の一部内容が判明しています。これらにもとづいて空欄になっている部分の仕訳を考えましょう。伝票問題とはいえやはりここでも仕訳が重要ですので、どのように仕訳を作ればいいのかという観点から解くようにしてください。
(2-A) 商品500,000円を仕入れ、代金のうち350,000円は現金で支払い、残りは掛けとした。
出 金 伝 票 | ||
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振 替 伝 票 | |||
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
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買掛金 | 150,000 |
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本問の取引を仕訳にすると、次のようになります。
仕 入 | 500,000 | 現 金 | 350,000 |
買掛金 | 150,000 |
この仕訳を2つに分解して、出金伝票・振替伝票に記入できるようにしましょう。
仕訳を分解する上でのヒントがいくつかあります。まず、金額や相手科目の内容はわかりませんが出金伝票が示されているので、出金伝票の仕訳では現金の減少として現金を貸方計上します。そして、振替伝票の貸方科目と金額が買掛金150,000円だと判明しています。それに加えて仕訳の貸借は金額が一致するので、借方の金額も150,000円だとわかります。これらを前提に、元の仕訳と結果的に勘定科目や金額が一致するように分解してみましょう。
[出金伝票の仕訳] | 現 金 | |||
[振替伝票の仕訳] | 150,000 | 買掛金 | 150,000 |
わかりやすいところから埋めていくと、現金の貸方350,000円がないので、出金伝票の仕訳の貸方に現金350,000円を計上します。そうすると、出金伝票の仕訳の借方の金額も350,000円であることがわかります。その上で、仕入の借方500,000円を2つの仕訳に分解します。金額は既に350,000、150,000だとわかっているので、それぞれの勘定科目を仕入とします。このようにして、合算すれば元の仕訳と結果的に同じになる2つの仕訳が完成します。
本問では、「商品500,000円を仕入れ、代金のうち350,000円は現金で支払い、残りは掛けとした」という取引を、「商品350,000円を仕入れ、代金350,000円を現金で支払った」「商品150,000円を仕入れ、代金150,000円は掛けとした」という2つの仕訳に分解しました。仕入を分解するパターンですね。
(2-B) 商品500,000円を仕入れ、代金のうち350,000円は現金で支払い、残りは掛けとした。
出 金 伝 票 | ||
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振 替 伝 票 | |||
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
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買掛金 | 500,000 |
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本問の取引は(2-A)で示されたものと全く同じです。つまり、元となる仕訳も(2-A)と同じになります。
仕 入 | 500,000 | 現 金 | 350,000 |
買掛金 | 150,000 |
それでは(2-A)と何が違うのかというと、解答欄に示されている振替伝票の内容が異なっています。
振替伝票の内容について、(2-A)では貸方が「買掛金 150,000」となっていました。しかし、本問では「買掛金 500,000」となっています。この買掛金貸方計上500,000円を前提にその他の仕訳を作るので、分解後の仕訳が(2-A)とは異なることになります。
その他のヒントは(2-A)と同じです。共通点や相違点などを踏まえて、元の仕訳と結果的に勘定科目や金額が一致するように分解してみましょう。
[出金伝票の仕訳] | 現 金 | |||
[振替伝票の仕訳] | 500,000 | 買掛金 | 500,000 |
わかりやすいところから埋めていくと、現金の貸方350,000円がないので、出金伝票の仕訳の貸方に現金350,000円を計上します。そうすると、出金伝票の仕訳の借方の金額も350,000円であることがわかります。
次に、元の仕訳では買掛金が貸方に150,000円しかないのに、分解後の仕訳では貸方に500,000円も計上しています。貸方に350,000円過剰なので、それを打ち消すために買掛金を借方に350,000円計上しましょう。350,000円の枠があるのは出金伝票の借方なので、そこに買掛金と記入しましょう。
最後に、仕入借方500,000円がまだないので、500,000円の枠がある振替伝票の借方に仕入を記入します。このように出金伝票、振替伝票の仕訳を作成すれば、結果的に元の仕訳と金額や貸借の位置が一致します。
本問では「商品500,000円を仕入れ、代金のうち350,000円は現金で支払い、残りは掛けとした」という取引を「商品500,000円を仕入れ、その代金全額500,000円を掛けとした」「買掛金500,000円のうち350,000円を即座に現金で支払った」という2つの仕訳に分解して考え、それぞれに応じて出金伝票と振替伝票に起票しています。