(4) 篠ノ井商店は、店舗として使用する目的で建物の賃貸借契約を、昨年の5月1日から5年契約で結んでいる。この契約では、5月1日と11月1日に、向こう半年分の家賃660,000円をそれぞれ普通預金から前払いすることになっている。当期の決算(×2年12月31日)における、支払家賃勘定と前払家賃勘定の記入を行い、締め切りなさい。なお、摘要・金額を記入することとし、摘要は下記から選択して記入すること。

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本問では、「支払家賃」「前払家賃」勘定が求められています。
その上で、次の手順で問題を解いていきます。

①問題から取引を読み解き、仕訳する
本問では、具体的な取引が記されているわけではありません。問題文から、当期において何日にどんな取引があり、どんな仕訳をしたのかを考える必要があります。問題を読み解きながら、その仕訳をしていきましょう。

問題文を一文ずつ整理すると、次のようになります。

昨年の5月1日から5年契約で結んでいる
→昨年契約し、前期から当期にかけて契約が続いています。

この契約では、5月1日と11月1日に、向こう半年分の家賃660,000円をそれぞれ普通預金から前払いすることになっている。
→5/1と11/1に6か月分の家賃を前払いする契約です。よって、当期においては×2/5/1と×2/11/1に660,000円ずつ家賃を支払っています。

当期の決算(×2年12月31日)における、支払家賃勘定と前払家賃勘定の記入を行い、締め切りなさい
→決算なので決算整理仕訳をします。×2/5/1に支払った5月~10月までの6か月分の家賃については、全て当期の費用として問題ありません。しかし、×2/11/1に支払った6か月分の家賃については、11月、12月の2か月分は当期分ですが、×3年1月~4月までの4か月分の家賃は次期分の支払家賃とすべきです。したがって、11/1の時点でいったん支払家賃として計上した4か月分の家賃を、前払家賃に振り替える仕訳をする必要があります。

また、上記の一連の流れから重要なことが見えてきます。それは、前期から契約が続いているため、前期の×1/11/1にも6か月分の家賃支払いをしていたということ。そして、前期決算においても、当期と同じように支払家賃のうち4か月分を前払家賃とする振替仕訳をしていたということです。この前期末決算で計上した前払家賃は前期から当期に繰り越され、前払家賃勘定の借方「×2/1/1 前期繰越 440,000」としてすでに記入されています。また、当期の期首において前期決算で行った振替仕訳の再振替仕訳がなされているはずです。この再振替仕訳は当期の仕訳なので、当期の勘定口座に転記する必要があります
この前期に計上した前払家賃と、その再振替仕訳を認識することができるかどうかが本問のポイントとなります。

上記の取引を整理すると、次のようになります。

【前期末決算(当期の取引ではないのであくまで参考です)】

×1/12/31 決算につき、支払家賃のうち前払分を前払利息に振り替える。
・前払分の金額を求めます。
 半年分の支払家賃660,000円 ÷ 6か月 ×  = 
※6か月を2か月と4か月に分けますが、どちらを前払の月数とするか間違えないように注意してください。
・前払家賃の振替仕訳をします。

【当期×2/1/1~×2/12/31(勘定口座にはここからの仕訳を転記します)】

×2/1/1 前期末に前払処理した支払家賃について、再振替仕訳を行う。
※前期末に行った仕訳の再振替仕訳(逆仕訳)をします。

×2/5/1 半年分の家賃¥660,000を普通預金から支払った。

×2/11/1 半年分の家賃¥660,000を普通預金から支払った。

×2/12/31 決算につき、支払家賃のうち前払分を前払利息に振り替える。
・前払分の金額を求めます。
 半年分の支払家賃660,000円 ÷ 6か月 ×  = 
・前払家賃の振替仕訳をします。
※前払月数は同じなので、前期末に行った再振替仕訳と同じ仕訳になります。

②仕訳から勘定口座への転記
それぞれの仕訳ができたなら、それを各勘定口座へ転記します。

③各勘定の締め切りを行う
本問は決算の問題なので、各勘定に応じた締め切りを行います。
(a)支払家賃勘定
支払家賃は費用です。損益計算書に区分される項目は次期に繰り越すことができないので、決算のタイミングでリセットしなければなりません。その際の処理は、支払家賃の残高の全額を損益勘定に振り替えるというものでした。したがって、支払家賃の借方残高をゼロにするために支払家賃の借方残高と同額を貸方に計上し、その分損益勘定の借方を増やします。

×2/12/31 決算において、支払家賃勘定の借方残高を損益勘定に振り替える。

(b)前払家賃勘定
前払家賃は資産です。貸借対照表に区分される項目は次期に繰り越すことができます。この締め切りの処理方法は、決算時に残っていて次期に繰り越す残高を、残高がある方とは逆に次期繰越として記入します。前払家賃は資産であり、残高があるのは借方なので、次期繰越は貸方に記入します。
また、×3/1/1の記入欄があることから、前期繰越を記入することを忘れないでください。

支払家賃
×2/1/1
前払家賃
×2/12/31
×2/5/1
×2/11/1

前払家賃
×2/1/1
前期繰越
440,000
×2/1/1
支払家賃
×2/12/31
×2/12/31
×3/1/1